本気で小説家になろうと思うならラノベに逃げるな!

本やCDが売れない時代になったとよく言われます。特に小説は本屋大賞直木賞などの話題になるものばかり売れてそれ以外の本は出ては消え出ては消えの状況で作家として印税だけで食べられる人はごく一部と言われます。

   こういう話をするとすぐ出てくるワードが「活字離れ」。今の若者は本を読まない。マンガや動画などのメディアには夢中になってまも書籍には興味が無いと言われます。本当にそうなのでしょうか?私はそうは思っていません。むしろ今の若者、特に10代の子達はスマホSNSやメールのやり取りを日常としていてむしろ文字によるコミュニケーションにはとても敏感だと感じてます。短いセンテンスの中でどれだけ自分の感情を表現するかについては中高生はとても気を遣っていると思います。

 問題となるのは今の10代、20代の人達の意思疎通のツールは文字だけではなくスタンプであったり、略語であったりできるだけ短文化し一目で解る表現が主流になっていて長い文章を書く、読むという事への耐性が失われつつある事だと思います。その結果、長編小説を読むとか、じっくりと推敲して自分の意見を言葉に書き連ねるということが好きではない人が増えています。

 そんな中でも小説が好きで文章を書くのが好きな人達は少数派でしょうが確実に存在しています。誰もが本を沢山読んでいるうちに自分でも書いてみたいという気持ちになりますよね。そう思う人は沢山いるし、何となく心の中では自分でも書けるだろうという根拠の無い自信を持ってる人もいるはずです。

 そういう人は1度でいいから実際に書き始めてみて下さい。今まで沢山読んだ小説からひらめいたアイデア、エッセンス、自分ならこんな話を面白く書けると思ってるその脳内のプロットを文字にして書いてみてください。

 おそらくほとんどの人は原稿用紙にして2枚程度で手が止まってしまうでしょう。あれほど頭の中では饒舌にストーリー展開していたはずの物語がいざ文字にしようとした途端に書けなくなってしまうのです。

 頭の中の画像、イメージを他人が読んでわかるように表現する事の難しさもどかしさは、実際に文字にしてはじめて解ります。自分では出だしはこんな感じ、途中にこんな展開があって結末はこんなどんでん返しで、というイメージをしっかり持ってるつもりでも結末まで一つ一つ文章を積み重ねていくのは根気がなければ絶対不可能です。勢いやノリで書けるほど小説は簡単ではありません。

 

 こんな苦しさに耐えて一遍の小説を書き上げられる作家の凄さ偉大さには本当に頭が下がります。そしてもう一つ小説を書く際に大事な事があります。それは間違った事を書くと校正チェックで指摘されてしまい下手すると小説全部を書き直さなければならないということです。

 わかりやすく言うと、ミステリー小説を書く場合、死因が毒殺であれば何の毒なのか?死後の検死の結果がどうだったのか、アリバイミステリーであれば具体的な交通手段がどうなのかなどキモになる部分で致命的なミスがあると小説そのものが成り立たなくなる可能性があります。実在の人物をテーマにした歴史ものなら現在明らかな史実はどうなのか考証は必須です。

 今はネット社会なのである程度は個人が自宅で学べる調べられる事はありますが、小説の重要なポイントになるような事柄がキーボード一つ叩いて出てくるような事では面白いストーリーなど出来るわけもありません。

 そこで若い小説家志望の人達が陥ってしまうのがファンタジーに逃げるという残念な道なのです。魔法物、異次元ファンタジーものに設定をしてしまうと前述のような問題はほぼクリアされます。筆者の勝手に作ったルールで全てOKになってしまうのです。

一口含めば即死する毒もあり、死んだ人が生き返るのもあり、相手の心を読むのもあり、何でもあり。そんなフリーな設定なら何も制約無しで物語が作れるので資料を調べる必要も無いし咎められる事もない非常に楽な執筆が可能になりますよね。

 その結果が独りよがりな都合の良い面白くも何ともないどこかで読んだような話になってしまうのです。もしもこのブログを読んでいる人でこれが当てはまってしまった人には耳が痛い事かもしれませんが、そんな安易な小説が読者の共感を得られるはずはありません。

 本当に小説家を目指すなら、ファンタジーに逃げずにリアルな小説にチャレンジしてください。そこから全ては始まると思います。